金木犀の匂いをかいだら札幌で過ごした日々を思い出した。何故なら、札幌にはこの花がなかったからだ。
私が生まれ育った東京ではこの花の香りが秋の始まり。
それからゆっくりと時間をかけて冬が訪れる。一方、札幌の秋は短く、
こんなほのかに甘い花の香りなどかぐことはなかった。
一気に冷たい空気が流れ野山に紅葉、それは長い冬の始まりだった。
町の匂いや、空気の冷たさ、かけ足でやってくる冬の足音それらは私のいる東京とは全く違うものだった。
先日、『遠音』のコンサートに足を運び、たっぷりと彼らの音楽を聴いた。
風のささやき、空気の冷たさ、冬景色、春の恵み、───北国にしかない自然のつぶやきが確実な音となって
私の心に伝わった。
遠音の曲をききながら、あんなこともあった、こんなこともあったと北海道で暮らした七年の日々を思い出した。
いくつもの思い出が曲の途中で交差し、何故か不覚にも涙がこぼれた。
中井貴惠(なかい・きえ)
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「大人と子供のための読み聞かせの会」 | ![]() |
